春分の日(3月21日(水))、中之島香雪美術館、
中之島フェスティバルタワー・ウエスト4Fに開館。

レポート:アートエバンジェリスト 中山くる美

朝日新聞社の創設者、村山龍平(1850~1933)が集めたコレクションを収蔵する香雪美術館(神戸市東灘区)の分館として、2018年3月21日(水・祝)、中之島香雪美術館が開館しました。2017年春、中之島フェスティバルタワー・ウエストが完成して、その銘板がビルの前に設置され、オープンが待たれていた中之島待望の美術館。大阪屈指のビジネス街にあって、都会の喧騒を忘れさせてくれる「市中の山居」をコンセプトに、静寂に包まれた御影本館のイメージを湛えた贅沢なアートスペースが生まれました。

中之島フェスティバルタワー(右)、中之島フェスティバルタワー・ウエスト(左)

中之島フェスティバルタワー(右)、中之島フェスティバルタワー・ウエスト(左)

エントランス ロビー

エントランス ロビー

3月20日(火)「開館記念展」テープカット

3月20日(火)「開館記念展」テープカット

アートが交差する中之島、
高層ビルで感じる古美術の奥深さ。

国立国際美術館、大阪市立科学館、東洋陶磁美術館、大阪府立中之島図書館…文化とアート、ビジネスが融合する中之島は古くより大阪を牽引する“島”として発展してきました。その中之島に大阪新美術館(仮称)の整備計画が発表されたのが2017年春。時期を同じくして中之島フェスティバルタワー・ウエストが完成。その4階に開館することになったのが、この春オープンした中之島香雪美術館です。さらには、大阪出身の建築家、安藤忠雄氏が自ら設計する建物を寄附して誕生する「こども本の森 中之島(仮称)」の開館も決まり、ますます中之島から目が離せなくなってきました。ベルリンの博物館島(ムゼウムスインゼル)のように、アートと文化の集まる島…“中之島”へと変貌を遂げようとしているのです。
また関西では、あべのハルカス美術館に続いて、高層ビルの中に生まれる美術館としても代表的な存在となり、経済や商業との橋渡し的な役割も担っていくのではないでしょうか。超現代的なビルの中で、村山翁の集めた古美術や茶の湯の世界観を感じる…。そこには、国内最高レベルの超高透過ガラス、個別に明るさを調整できるLED照明などの最新設備が、コレクションをはじめとする企画展示をいっそう魅力的に演出してくれます。

御影の閑静な住宅街に佇む香雪美術館。
その雰囲気を中之島のビル内美術館にも…。

古美術ファンや茶道を嗜む方々に知られる1973年開館の香雪美術館。その規模は小さいながらも、心惹かれる企画展に足を運ぶのが楽しみな美術館のひとつです。その趣ある雰囲気はもちろん、阪急「御影」駅から歩いて5分ほどの地の利のよさも魅力。同様に中之島香雪美術館の恵まれたアクセスもより多くのファンを獲得するにちがいありません。
中之島香雪美術館の常設展示として、御影にある国指定重要文化財・旧村山家住宅に建つ茶室「玄庵」を「中之島玄庵」として原寸大で再現。「村山龍平記念室」では、旧村山家住宅についての説明や洋館居間の再現、朝日新聞社や美術雑誌『國華』との関係についても展示・紹介されています。古美術を最新の設備で鑑賞できるだけでなく、御影の情緒や村山翁の足跡など、「市中の山居」にふさわしい多彩な展示にどっぷり浸ることができます。

村山邸ジオラマ

村山邸ジオラマ

村山龍平の雅号「香雪」を名に冠した
珠玉の古美術コレクション。

現在の三重県玉城町に武士の長男として生まれた村山龍平は、少年時代より剣道と砲術に打ち込み、刀剣を愛好したといいます。明治維新の廃仏毀釈や西洋化の影響で、日本文化や古来の価値観は軽視され、美術品は安価で海外に流出していきました。そんな風潮を危惧し、新聞紙面で文化財の調査・保護を訴え、自らも美術品の収集をスタート。さらには美術雑誌「國華」を支援するために私財を投じて資金を提供、やがて経営を引き受けることになります。
40歳前後から始めたコレクションは、愛好する刀剣はもとより、仏教美術、中国の絵画、日本の漢画、文人画へと続きます。その収集に強い嗜好は感じられず、自身が古美術を学ぶように真摯に向き合いながら集められているとのこと…。美術への造詣を深めながらの収集の過程は、まだまだ未知な部分が多く、書簡や資料などの研究でさらに詳らかになっていくことが期待されます。
50代になると茶の湯に関心を示し、明治35年(52歳)、大阪の実業界を中心とする18人が集う十八会の発起人となり、関西財界人たちとの交遊を通じて藪内流を修めていきます。明治44年(61歳)には、藪内流家元の茶室「燕庵(えんなん)」の忠実な写しである「玄庵」を村山邸内に建てます。それを中之島香雪美術館に再現したのが、茶室「中之島玄庵」です。「正直を以って心を守り、清浄を以って事を行い、和礼を以って人と交わり、質朴を以って身を修める」を茶法の基本としている武家点前の藪内流の心そのものが、村山龍平の生き方に通じるようです。

村山龍平

村山龍平

1年を通じてじっくりとコレクションを俯瞰できる
興味深いテーマで開催される5回の展覧会。

気になる展覧会があれば御影の香雪美術館に足を運ぶこと度々…それはコレクションを中心とした展示であっても、その全容を知ることはできませんでした。中之島香雪美術館の開館記念展「珠玉の村山コレクション」~愛し、守り、伝えた~は、村山コレクションについてじっくり俯瞰することのできる絶好のチャンスです。今回を逃せば、こんな機会はそうそう訪れることはないでしょう。
開館から1年間、重要文化財19点をはじめとするコレクションの中から300点あまりが、テーマごとに5期にわたり公開されます。近世絵画、工芸品、茶道具、仏教美術、絵巻物、武具など、幅広いジャンルの名品が最新設備を備えた都会の美術館で存分に楽しめるのです。

Ⅰ. 美術を愛して 2018年3月21日(水・祝)~4月22日(日)

今回、オープニングを飾ったのは、刀剣、仏教美術、書跡、中世近世絵画、茶道の世界からチョイスされた村山コレクションを凝縮したような名品の数々。私が最も気になったのは、写真の曾我蕭白「鷹図」。“秋の景色を春に展示の意図は?”と考えつつ、開館記念の序章を飾るにふさわしい美しい作品。60点あまりの展示作品は、Ⅱ~Ⅴ期への期待を高めるに充分の内容でした。

重要文化財「太刀 銘 吉家作」

重要文化財「太刀 銘 吉家作」

曾我蕭白「鷹図」

曾我蕭白「鷹図」

藪内剣仲の師、古田織部好みの道具

藪内剣仲の師、古田織部好みの道具

Ⅱ. 美しき金に心をよせて2018年4月28日(土)~6月24日(日)

重要美術品 長谷川等伯「柳橋水車図屏風」右

重要美術品 長谷川等伯「柳橋水車図屏風」右

重要美術品 長谷川等伯「柳橋水車図屏風」左

重要美術品 長谷川等伯「柳橋水車図屏風」左

野々村仁清「色絵忍草文茶碗」

野々村仁清「色絵忍草文茶碗」

Ⅲ. 茶の道にみちびかれ 2018年7月7日(土)~9月2日(日)

喜多川歌麿「月見の母と娘」

喜多川歌麿「月見の母と娘」

Ⅳ. ほとけの世界にたゆたう 2018年10月6日(土)~12月2日(日)

重要文化財「薬師如来立像」

重要文化財「薬師如来立像」

Ⅴ. 物語とうたにあそぶ 2018年12月15日(土)~2019年2月11日(月・祝)

岩佐又兵衛「堀江物語絵巻」

岩佐又兵衛「堀江物語絵巻」

開館記念展が終了する1年後からは、年5回程度の企画展が開催されるという。村山コレクションに関するさらなる研究成果や、館外作品とのコラボレーションなど、どんな展覧会が催されるか常に注目を集めることでしょう。働く人、楽しむ人、行き交う人々で溢れる大阪の中心で活動する美術館として、午後5時閉館は少し残念…。仕事帰りのサラリーマンが、ディナー前のファミリーが、フェスティバルホールのライブに向かうカップルが、「コンラッド大阪」に宿泊する旅行者が、気軽に立ち寄れる美術館であったら…せめて金曜日だけでも午後7時、8時くらいまで開館しているとうれしく思います。


中島香雪美術館開館記念展
「珠玉の村山コレクション」~愛し、守り、伝えた~
  • 会期/(Ⅰ期~Ⅴ期) 2018年3月21日(水・祝)~2019年2月11日(月・祝)
  • 開館時間/10:00~17:00(入館は16:30まで)
  • 休館日/月曜日(祝日の場合は翌火曜日、5月1日は開館)、年末年始
    • 展示替えなどによる臨時休業あり
  • 料金/一般900(700)円、大高生600(350)円、小中生200(100)円
    • カッコ内は前売り(一般のみ)・20名以上団体料金
  • 主催/公益財団法人 香雪美術館、朝日新聞社、朝日放送テレビ
<アクセス>
「肥後橋」駅~中之島フェスティバルタワー・ウエスト

「肥後橋」駅~中之島フェスティバルタワー・ウエスト

〒530-0005 大阪市北区中之島3-2-4 中之島フェスティバルターワー・ウエスト 4F
tel:06-6210-3766
http://www.kosetsu-museum.or.jp/nakanoshima/

  • JR「大阪」駅桜橋口より徒歩11分
  • JR東西線「北新地」駅より徒歩8分
  • 地下鉄四つ橋線「肥後橋」駅、京阪中之島線「渡辺橋」駅と直結
  • 地下鉄御堂筋線「淀屋橋」駅より徒歩6分
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