3331 ART FAIR 2019

「3331 ART FAIR 2019」レポート
〜一歩進んだアートとの付き合い方〜

 

レポート:アートエバンジェリスト 橘高 あや

アートファンにとっては春の風物詩として定着しつつある「3331 ART FAIR 2019」。
自由で新しいアートの場を提供している3331 Arts Chiyodaで、今を生きるアーティストたちと出会いました。

創造の場としてのアートフェア

銀座線末広町駅の側に位置し、旧練成中学校の校舎を丸ごとリノベーションしたアートセンター、3331 Arts Chiyoda。2019年3月6日から3月10日に開催された「3331 ART FAIR 2019」の期間中、全館をあげてアーティストたちの瑞々しい感性が光る作品を展示していました。
3331のアートフェアは、ただの現代アートの見本市ではありません。
アーティストとギャラリーとコレクターを直接つなげ、関係性を創造する場としてのアートフェアです。
アートフェアの醍醐味は、何と言っても作品を購入する事ができるということ。
作品を購入するということは、気に入った作品を所有できるということだけでなく、作品を作ったアーティストの今後の成長を見守る楽しみも生まれます。
「買って終わり」ではなく、アーティストと支援者としてのコレクターの「関係性の始まり」なのです。

アートエバンジェリスト協会の“コレクター・プライズ”は
宮北裕美さんの《Drift Trace Side》に決定

3331のアートフェアでは「作品を購入する事が作家に賞を与えること」という理念を掲げています。それに賛同した著名コレクターや企業人、クリエイターなど、100名を超える各界のキーパーソンが“プライズセレクター”としてフェアに参加し、作品を購入することで“コレクター・プライズ”をアーティストに授与しています。
新しい時代を作るアーティスト発掘に貢献すべく、アートエバンジェリスト協会は昨年に引き続きプライズセレクターとして参加しました。
三沢恵子教育推進部長と現在活動中のAEが協議に協議を重ねて、今年のアートエバンジェリスト協会の“コレクター・プライズ”は宮北裕美さんの《Drift Trace Side》に決定しました。

宮北裕美《Drift Trace Side》(2019,アクリルプリント)

宮北裕美《Drift Trace Side》(2019,アクリルプリント)

繊細で自然なダンス

ダンサーとして表現活動をしている宮北さんは、兵庫県伊丹市出身。
2012年頃から、視覚芸術とダンスの間で試行錯誤を繰り返してきたといいます。
今回コレクター・プライズに選出された《Drift Trace Side》は、2015年に制作された映像作品の《Drift》から複数の静止画を抜き出した《Drift Trace》シリーズのうちの一点です。

映像作品《Drift》と静止画の《Drift Trace》シリーズ

映像作品《Drift》と静止画の《Drift Trace》シリーズ

 

下から吹く風に煽られながら、指先まで美しく繊細な動きをする掌と戯れ踊るのは、一枚のティッシュ。宮北さんは作品の中でティッシュとダンスをしているのです。

ご自身の表現について、宮北さんは次のように話してしてくださいました。
「身近にある全てのモノの動きをダンスと捉え、振付師になったつもりで、人ではないモノたちに踊ってもらっています。以前に開いた個展では、ゼムクリップにダンスをしてもらったこともありました。」
今回の作品については。
「ティッシュの偶然の動きに抗わない。そうすると、自分でダンスをすることでは生み出せない動きになります。《Drift Trace》シリーズは、自分の意思や作為を超えてゆけるように、ランダムに静止画を抜き出して一つの作品にしました。私はダンサーなので、こうしてモノとして作品が残るというのは少し不思議な感じもしています。」

ティッシュ一枚が、こんなにも美しい踊り手になるなんて。
身近なモノに対する発見と驚きから、日常生活への愛おしさまでも湧き起こしてくれます。
宮北さんというフィルターを通して《Drift》や《Drift Trace》シリーズに写し出された世界は、しなやかで繊細で優美です。
もっと彼女の目を借りて世界を見てみたい。彼女の表現を見続けたいと思える、貴重なアーティストとの出会いでした。

宮北裕美さん

宮北裕美さん

東京都現代美術館でパフォーマンス

近年、その場に合わせた即興的なダンス、サイトスペシフィックなダンスをしているという宮北さん。2019年3月29日(金)と30日(土)には、リニューアルオープンする東京都現代美術館で、世界的なサウンド・アーティストの鈴木昭男氏と共にパフォーマンスを行うとのこと。
ダンスをしながら、美術館の中を道草しながら巡るパフォーマンス。ぜひチェックしてみてください。

積極的なアートとの関わり方

「現代アートはよく分からないし、分からないものにお金は払えないなぁ」
少し前までそう感じていた私ですが、昨年3331のアートフェアに初めて参加し、初めて作品を購入するという経験をしました。
我が家にやって来て一年経ったそのアート作品は、今も私の心を和ませ慰め、生活に潤いを与えてくれています。
私が作品を購入した事がアーティストにとって支援になったなら、それは大変嬉しい事です。
素晴らしいプレーを期待してスポーツチームや選手を応援するように、素晴らしい作品が生まれることを期待してアーティストを応援していく。
一方的に感動を受け取るのではなく、作品を購入してアーティストを支援する形で、アートに対して能動的な関わりを持つ事ができる。
そんなアートとの付き合い方もできるのだと、アートフェアに参加して気づく事ができました。