レポート:アートエバンジェリスト 春山 博美

映画配給会社クレストインターナショナルによるヴィスコンティ監督『山猫』『ルートヴィッヒ』両作品の巡回上映にあたり、バー・デル・ソーレ六本木店にて6/28まで店内に映像を流しながらヴィスコンティ関連パネルを展示していた最終日に打上げを兼ねた「ヴィスコンティと彼の愛した美しき男達の夕べ」の集いを開催し、私がナビゲーターを務めましたので、概要報告を致します。

「ヴィスコンティと彼の愛した美しき男達の夕べ」の集い

店外のイベント用パネル

参加者16名は恵比寿ガーデンシネマに置いたフライヤーを見た方、美術ACADEMY&SCHOOLにてフライヤーをもらった方、フェイスブックをチェックした方、お店で熱心にパネルを見ていた時に勧められた方などでしたが、事前アンケートでの好きな作品欄に『地獄に堕ちた勇者ども』(イタリア語原題『神々の黄昏』)を挙げる方がかなり多く、今宵のメンバーは只者じゃないなと俄然スイッチが入りました。(暴走の予感?ご安心を、今回は保険として、AEの盟友である伊崎さんに、私が暴走しそうになったら合図をしてねと拝み倒して参加戴きました。)

150年程前のリソルジメント(イタリア統一運動)時代の義勇軍「赤シャツ隊」のコスプレ姿(昨年の森美術館「ディン・Q・レ展」が思い浮かびました)の参加者も加わり、場の雰囲気は嫌でも盛り上がりました。

私も『ベニスに死す』ファンが多数であろうと予測し、秘蔵のオリジナルプログラム(カラーのタッジォ折込み付)を持参致しました。「これは何でも鑑定団もの~白手袋をはめなきゃ~」とのどよめきの中、タッジォ様(映画に登場する美の化身 昨秋の近代美術館「「映像表現’72」展、再演」にも登場!)撮りまくり状態になり、開始前から熱気に包まれてきました。

集いの進め方は、着席にて料理が11品も出る上に飲み放題でしたので、料飲の合間に区切りをつけながらヴィスコンティと美しき男達を列伝スタイルでマイク片手に熱く語るという形を取りました。(皇妃エリザベート(シシィー)が企てたルートヴィッヒ2世救出作戦が失敗したという地元に伝わる噂話をフェルセンのマリー・アントワネット救出作戦のエピソードと比べてみたり、イギリス人俳優ダーク・ボガードは第二次世界大戦中、アンネ・フランクが収容されていた収容所に最初に入った連合国軍将校の1人であったこと等々、普通のワイン会で披露したら周囲が完全にドン引きになるようなネタを心置きなく)

クレストインターナショナル提供の映画パンフレットを景品としたヴィスコンティ関連クイズには美術検定2級レベルを凌ぐカルト問題を多数用意していたのですが、正解者が続出で、これは流石と舌を巻きました。

「映画」は語り易いアートですし、観た映画館も含め多くの方の共通の思い出になりやすいので、期待以上に初対面の参加者同士の会話も弾んできました。
締めは『山猫』の中でクラウディア・カルディナーレがアラン・ドロンへ放つ名台詞を引用してのマルサラ酒サービスでした。(お店側の企画者は、他にも配給会社の了解の下、『山猫』スチール写真のランチョンマット(汚れない内にと早々にしまい込む方も続出)を用意したりと仕掛けを凝らしてくれました。)

人前での映画を主体としたナビゲートは初めてでしたが、映画に限らずアート系イヴェント実施に共有できそうかなと気付いた<成功ポイント>と<反省点>をささやかにまとめてみます。

<成功ポイント>
1. 事前アンケートの実施

30分あった受付時間を活用して実施したアンケートにより参加者のレベルや志向傾向が判り、欠かせないものと再認識 (口頭でのLGBTネタの許容確認のやりとりの中で参加者各位のおおまかなキャラ把握も)

2. 仕込み・仕掛け

ある程度の予測の上、当たれば(外したら悲惨)効果的と実感 タッジォ様の他にも『山猫』でのリソルジメント説明に用意していたサルデーニャ関連資料が、近々にサルデーニャ旅行を計画されていた方に大好評という想定外のヒットも

3. 良き協力者の存在

マルサラ酒サービスや『山猫』ランチョンマット等の洗練された仕掛けは流石プロの視点ではないと気付くことの出来ないポイント 素敵なフライヤーを即刻作ってもらったりとお店側の企画者とは互いにいい距離感で分業協力体制を築け、今回のコラボで各々幅を拡げられたのではないかと

4. 決め手は料飲+LOVE

美味しい料理やお酒は人と人との距離を縮める上で重要なファクターとなるのは勿論だが、今回は恵比寿での映画祭に合わせ映画監督ヴィスコンティというソリッドなテーマと彼の郷土であるイタリアの食文化を提供するレストランでの開催という「掛け合わせ」が人を引き付けた最大のフック。そして私めのヴィスコンティ作品への愛情の深さがスパイスとして味付けに多少貢献?

<反省点>

1. 映画だけに捉われず、美術、音楽、文学、歴史等にも幅広く言及したが、音楽ネタがややマニアック過ぎたかなと反省(ヴィスコンティや彼の後継者とも言えるカヴァーニは監督としてだけではなくオペラ演出家(ヴィスコンティのマリア・カラスへの演技指導は伝説!)としても著名であり、ヴィスコンティ一族とミラノスカラ座との関係、ルートヴィッヒ2世のヴァーグナー支援、普墺戦争に敗れたヴィーン市民を慰めた「美しき青きドナウ」、『ベニスに死す』マ―ラー第五交響曲、『夏の嵐』ブリュックナー第七交響曲、テアトロ・フェニーチェ等クラシック音楽情報は欠かせないものであるが、もう一工夫出来たかもしれない(貸切であれば各音楽を会場で流したり、BGMとして「アダジェット」をリピートモードで流せたかも)

2. AE伊崎さんの貴重な情報によると「フェリーニ・ファンがヴィスコンティ・ファンに転向できるのかしら?」とある参加者からあまりにも鋭すぎるご指摘があったとのこと。事実、私は現在のメルアドにフェリーニ作品名を使用している程のフェリーニ・フリークであり、ウィスコンティのライヴァルとしてのフェリーニに言及した際にコアなファンには見抜かれてしまったのかも。今後、ヴィスコンティへのLoveにもっともっと磨きをかけなければ… 熟練者ならともかく、私レベルでは、少なくとも人様に語っている時点では、その作家(美術作家を含む)を一番好きになっていないと、なかなか思いが伝わらないかなと感じている次第